ヴェルタ6stに思うところあり

自転車競技は空気抵抗と戦う競技。

マラソンでも空気抵抗はあるが、自転車とは比べ物にならない。

そこにチーム戦略があり、ドラマが生まれる。

 

ヴェルタ6stで個人TTの世界チャンピオンのトニー・マルティンがスタート近くから逃げて、

ゴール前で惜しくも捕まった。

集団は並の選手相手なら、赤子の手をひねる様にゴール前5キロで吸収するのだが、

流石は個人TTスペシャリスト、結局はゴール前までもつれ込んだ。

このレースの最後のギリギリのやり取りで、ちょっと興味深いものを見た。

 

通常マルティンが逃げているとオメガ・ファーマ - クイック・ステップ(以下クイックステップ)の

メンバーは前を引かない。引かないことによって脚を温存できるし、温存しているからマルティン

捕まった後も動けるし、動きますよと言う暗黙のプレッシャーを引いているチームに与える事で、

逃げてるマルティンの間接的アシストになる。

間接的・・・に。

ところがゴール前1.6キロ地点で、クイックステップのメンバーが直接的行動に。

追撃のトレインを組んでいるアルゴスシマノの前まで一気に上がったクイックステップの一人が

先頭のアルゴスの選手を自分と道路の柵の間に追いやる形で、踏ませないようにしたのだ。

 

通常ヨーロッパのプロはここまではしない。

なぜなら、職業として毎日自転車に乗り、違うレースでも都度顔を合わすのに、あまり無理な走りを

していると、チームも個人も後々プレーがしにくい状況になるから。

しかし、今回はあえてそのリスクを覚悟で、直接的行動に出たのはトニーマルティンの頑張りに

心が動かされたのだろう。

 

それともう1点気になったのが、ゴール前のカンチェラーラの動き。

スプリンターを後ろに引き連れているわけでもないのに

誰かのアシストのようにゴール前を引いていた。

(結果は3位だから、自分が勝ちに行ったともいえるが・・・)

見かたによっては、マルティン潰しにも見えた。

TTスペシャリスト同士だから?男の嫉妬か?

思いたくはないが。

追ったのが、カンチェラーラだと知り、マルティンも怒っていたな。

『ブーメランは自分に戻ってくる』ってコメントしたらしい。

 

この二つの出来事、長い競技生活を考えるとやっちゃいけないNG行動なんだろうけど、

やっちゃうんですね。自分自身、思い起こせば心当たりの一つや二つはあるし。

 

レースの流れは複雑で、その場その場で色々と対応しなければなりませんが、基本はスポーツです。

正々堂々、後ろ指さされるレースだけはしたくないですね。