選手の心に取りつく病と予防策

シーズンインがだんだんと近づき、ここのところ、イベントランの企画が多い。

信楽だったり、淡路島一周だったり。

信号、車の少ない、優良なコースだと、車の恐怖に怯えることなく走れるので、

練習に集中できる。

交通量の多い道や、道路幅が狭い道は常に車両を右後ろに意識しなければならず、

それだけで、結構疲れてくるので、たまにあるイベントランは、気分転換の面も含め

有り難い。

 

建国記念日の昨日は、用事で練習が出来なかったので、今日も朝練へ行く。

前日のLINEで、のいちゃんとジョニーさんが朝練へ行くことは知っていたけど、

彼らとガチで走ると言う事は、血の味を味わう可能性が高く、咳のぶり返しを

考えると、同行しないほうが良い。

しかし、時間と場所がもろにかぶっているので、わざとずらすのも不自然なので、

同行して後方待機か、2分先行をしようと、約束しないで、約束の場所へ向かう。

 

しかし、家を出るのに手間取ったのと、脚が重くスピードに乗らず

2分ほど遅れて、約束の場所に到着。

誰もいない・・・

行くと言ってないのだから、待っているわけもない。

 

すぐにスタートして追いかけるが、前は二人で血の味上等で踏んでいるので、

追いつく訳もない。

あまり良いとは言えないタイムで、頂上を通過し、帰りの峠へ向かうと、前方に

二人のローディが・・・。

途中の工事の交互通行で引っかかったようだ。

 

登りのスタート地点で、その差はおよそ15秒ぐらい。

最近の実績では、私が遅れることが多い登りなので、15秒を追いつくのは難しいが、

このまま離れてしまっては、存在すら認知されずに、練習が終わる。

それは、結構悲しい気がして、後半死んでもいいから、前半で一気に追いつくという

選択をする。

 

ここ一発、目標が決まると、集中力がぐっと高まり、アドレナリンが注入される。

勾配の強くなるあたりで、追いついたが、そこはいわゆる勝負どころなので、

無言で抜いて行く。

居ないはずの人間に抜かれてびっくりしただろうが、この局面で挨拶は不要。

必要なのは先頭で頂上へ到達する事。それ以外にない。

 

当然、のいちゃんもジョニーさんも、この不文律を理解しているので、追ってくる。

後半は前半の突込みのツケが回ってきて、意識が飛ぶほどきついが、

ここで、迷ってはいけない。

 

迷いの癖は一旦心の中に住み着くと、音もなく心の中で広がって行き、

時間をかけて肉体を滅ぼす。

自分に一番近く、そして最大の敵は自分自身の心。

 

そんな難治性の病に取りつかれるのは嫌なので、

練習後に、今日の走りを反芻した時に・・・

”あれ以上の踏みは出来なかった”と迷いなく言えるように走る。

それが唯一の予防策。

 

腕がしびれ、前も良く見えない状態で、久しぶりに頂上を先頭通過。

彼らは一つ目の登りを、競い合い、全力で走ってきているので、

独走で脚を残した私とは比較対象にはならないのだが。

タイムも悪くないので、良しとしておこう。

 

咳の再発を恐れて、一人で中負荷で淡々とと思ってスタートした朝練だが、

期せずして高負荷の、追い込み練に変わってしまった。

結果オーライならそれでいいのだが、やっぱりダメだ。

もう、肺だか、気道だかわからないが、小さな虫がいるみたいに、こそばい。

 

しかし、もう強度を落とす時間は無くなりつつある。

咳と高強度。

背反する二つの要素を、いかにして手なずけるのか。

ギリギリの舵取りは続く。