得手と不得手

 

自転車乗りのその走りの得意分野を表す言葉として

スプリンター クライマー TTスペシャリストとか、更には最近では

パンチャーとかルーラーとかの細かい区分けを耳にする。

確かに、陸上競技にマラソン選手、中距離選手、短距離選手が

あるように、自転車競技においても選手のタイプがあるのは

当然だ。

 

オールラウンダーと呼ばれる非常にまれな選手でない限りは

誰にも得意不得意はあるし、オールラウンダーと呼ばれる選手も

全ての状況に高次元で対応しているだけで、本人の感覚としては

不得意な種目はあるのであろう。

 

親からも引き継ぐ、肉体的特徴は根本からは変えれないだろう。

だが、ちょっと待ってほしい、不得意分野を自分の努力不足、練習不足を

棚に上げて肉体のタイプのせいにしていないだろうか。

暴飲暴食をコントロールできず、練習も少なく体重のコントロール

出来ないために、体重が落ちず平地のスペシャリストになっていないだろうか。

 

本来の平地のスペシャリストは筋肉の鎧をまとう空気抵抗と戦う

高出力を出し続けられるタイプだ。脂肪はお荷物でしかない。

一方クライマーは脂肪が極めて少なく、軽い体重で平地のスペシャリストが

空気抵抗と戦う為に出していた力を、重力と戦うことに使う。

 

こうして考えると、クライマーと平地のスペシャリストの違いは

あまりないし、実際、両方を高いレベルでで走る選手は沢山いる。

ちょっと毛色が違うのがスプリンター。

このタイプの選手は非常に素質の要素が大きい。

 

スプリント力のない選手がスプリント力をホントの意味で獲得することは

出来ないと思う。こういう書き方は、人の可能性を否定するので、

書きたくないのだがマラソン選手が短距離選手に勝てないのと同じだ。

 

しかし、自転車のロードレースはマラソンと違い、レースの綾があり、

登りがあり、チームプレーの要素がある。世界最高のスプリンターと言われる、

カベンディッシュでさえ登りで分断されれば、ゴールスプリントに参加することも

出来ない。

 

ロードレースでは距離が長く、厳しいレースであればあるほど、

ゴール前では脚が残ってるもの勝ちの状況が生まれる。そこで、ちゃんと

冬から地脚が付くトレーニングをしてきたスプリントのない選手が逃げたり、

場合によってはスプリンターを凌駕するゴール勝負を見せたりする。

 

スプリンターがスプリントをちゃんとするには、ゴール時点で脚が

残っていることが重要で、引きずり回され脚にキテいてはまともな

スプリントは出来ない。つまり、得手を出す前に、不得手でふるいに

かけられるではだめだということ。ほとんどの場合、不得手は得手には

変わらないが、不得手は普通位に改善し、得手はスペシャリストと言う

領域に高める事が表彰台に上るには必要なことだと断言しておく。

 

不得手の克服にはとってもいい時期だ。目先の結果を追わなくてもよいこの時期に

少し落ち着いて不得手対策、得手対策を実行することを激しく推奨する。

武器を持たずに戦場に行っても、生き(勝ち)残ることはできない。

 

※ブログ全般に渡り、実業団以上の競技者対象の記載です。
ホビーの方々にも参考になる内容ですが、過激なので・・・。