永遠の10秒

 

『何でおさえない!』

俺:『俺は合流しようとしてただけやろ』

スイスのチームで私とチーム員のやり取り。

今考えても答えは出ない、どのようにするのが最善だったか。

 

丘越えが有る周回コース。

チーム員が逃げが形成される集団に入っていた。

強引な力逃げだったために集団は一列棒状になり、

やがて中千切れが散発し始めた。

逃げは確定的に、決定したものではなかったので、

私も中切れをかわしながら、必死で踏んでいた。

 

そして、最終的には合流し、逃げ集団を形成した。

その後、その集団でのゴールスプリントを経て

最初の言い争いとなる。

 

私の視点で見れば、まだ逃げは形成されておらず、

私もそこに加われる状況だった。

だが彼の視点で見れば、私が追ったとなる。

どの時点までが、追っていいのか基準はない。

結果によっても、捉え方によっても正解不正解の判断は

分かれるだろう。

 

例えば、集団に同じチーム員が増えれば、交互にアタックを

かける等、作戦の幅が広るし、人数がいれば確率論からも

結果を残せる可能性が広がる。

次の展開を考えれば逃げにはチーム員が複数いるほうが

良いという視点で見れば合流は正当化される。

 

あの時、たった10秒だけ門が開かれていた。

先日の舞洲でのE1のレース。

松ちゃんが逃げに入った時、FJTはポジション的に一緒に行けた。

形成されようとしている逃げ集団の前にも少人数の逃げが有ったので、

それも加味すると、一緒に追走の逃げ集団を形成するべきだった。

 

はた目から見ても、FJTの躊躇が感じられた。

そして、10秒が経過し逃げが確定すると、FJTの前にある門が閉じられた。

後は、集団のコントロールに回る事が要求される。

以降は前を追えば罪人扱いだ。

 

FJTを責めているのではない。

例えば松ちゃんが、先頭に追い付き、成績を残せば『FJTよくやった!』となる。

しかし、彼のレースだけを見れば、『あそこで行かないと…』に言葉が変わる。

そこには正解はない。

 

正解はないが、力が拮抗する選手が複数いるチームで、チームオーダーなしで

走った場合”行ったもん勝ち”の”行かれたもん負け”の状況が発生する、

これはスイスでも日本でもどこでも同じ。

チームオーダーが無くても、チーム員が逃げれば残りの選手はおさえに回る。

いくら脚が有っても、楽でも追ってはいけない(単独追いは状況によりあり)。

これは万国共通ルール。

 

積極的に動かない選手の前には毎レース、門が閉じられる状況が発生する。

良きチームとは、そういったチーム内の良い意味での争いがあるものだ。

 

最初の口論は私が日本人的な感覚で『悪かった』、

『すまんかった』と事を収めた。

収めたつもりだったが、それは文化の違いに見事にやられた・・・。

奴は言った『ほら見ろ、あいつは謝ってる!』、

『悪いことしたって認めてるやろ!』

ああ、これが噂に聞く、外国人の自己主張と交渉術か・・・

 

外国人相手にうかつに謝ってはいけないと知った23歳の春。

選手としては強いが、ちょっと意地悪なMaffi・・・

元気でやってるかな。